『王様ゲームとは一体何だ?』
セルティの言葉に、はゲームのコントローラを持ったまま首を横に動かした。今、はとあるゲームをやっている。そのゲームは狩沢達から『おすすめだよ!』と言われて気になり貸してもらったゲームなのだが、イベント中にキャラクター達が“王様ゲーム”をやりだした。王様のクジをひいたキャラクターが『王の名において命ずる!! すみやかに、王様にチッス!!』と立ち上がっているところで止まっている。
何と答えればいいのだろうか。このままゲームを進めれば、自ずとわかるのではないだろうかと思ったは、セルティに『ゲームを見ていればわかるよ』と答えた。
『あ、1番の男の子が立ち上がった』
「……男の子だって分かって『やっぱ2番…』って言ってるけど、却下されてるね」
『こ、これはどうなるんだ!? 男同士でき、キスするのか!?』
雰囲気で酔ってしまった赤い制服を着たキャラクターが手を叩きながら『チッスチッス〜!!』と笑っている。どうなるのだろうかとテキストを進めると、どうやら王様は覚悟を決めたようだ。
『センセイに 捧げてもいい この純情……って、おい、この“クマ”ってキャラクター、まさか……!』
だが、その“クマ”と言うキャラクターは立ち上がっていた指定した1番のキャラクターではなく、その隣に座っていたどこかいかついヤンキー風の男子生徒を押し倒して画面から消え去ってしまった。二人はその展開に笑ったが、セルティは我に返って急いでPDAを打つ。
『王様ゲームの内容は大体わかった。……それで、王様ゲームと言うのは簡単に出来るものなのか? このゲームみたいに、何かイベント事が無いとしてはいけないゲームなのか?』
「やろうと思えばすぐに出来るよ? ちょっと準備が必要だけど」
『割り箸か!? 割り箸ならあるぞ、前に新羅が何故かたくさん買って来たからな』
何故たくさん買って来たのだろうかと言う疑問はさて置き、は王様ゲームをしたがっているセルティの為に人数を集める事にした。静雄はもちろん、セルティの友人を中心にメールを送信していく。開催場所はセルティと新羅が住んでいるこの部屋。
返信内容は様々だが、やはり皆がつっこむのは『何故王様ゲーム?』と言うところ。
――狩沢さん達から借りたゲームで王様ゲームをしていたから、したくなったんです……送信っと。
その狩沢達ももちろん誘った。どうやら狩沢達もこのゲームをしていて王様ゲームがしたくなったらしく、遊馬崎と二人でこのゲームで行われた王様ゲームの真似事をしていたらしい。
簡単に想像がつく、と笑っていると、また携帯電話が震えた。サブディスプレイには何故か臨也の名前が表示されている。
「あれ?」
知っての通り、静雄と臨也は仲が悪い。お互いがお互いを嫌い合い、臨也に至っては静雄を殺そうとしている。
だからこそ、は臨也には送らなかった。ここで静雄と喧嘩をされては困るからだ。だが、メールは臨也にも送信されていた。何かの間違いであってほしいと送信ボックスを見るが、臨也にもメールが送信されている。
おそるおそる返信内容を見る。
『面白そうだし行こうかなぁ。……でも、シズちゃんは来ないよね? これ、一斉送信だから他のアドレスも見えるんだけどさ、俺の携帯では何故かシズちゃんのアドレスも見えてるんだ。シズちゃんは来ないよね? 俺の携帯電話が故障してるだけだよね?』
――故障なんかしてません。
「セ、セルティ! どうしよう、どうしよう!」
『落ち着け。何があったんだ?』
「静雄さんと、も、もしかしたら臨也さんが、こ、ここに来るかも……!」
『……ソンナマサカ』
「どうしよう! 私、とんでもない事しちゃったかも……!」
臨也にどう返信しようか迷っているとき、再びの携帯電話が震える。今度は静雄からだ。セルティとは身体をくっつかせてメールの内容を見た。
『楽しそうだな、それ。もうすぐ仕事も終わるし、そっちに向かうよ』
そこで二人は気付く。静雄の携帯電話に、臨也のアドレスなど登録されていないと言う事に。一斉送信で送った為、もちろん静雄に届いたからのメールには、臨也のアドレスも載っているはず。しかし、静雄は一切反応を示さなかった。それはそうだ、登録されていないのだから。
何も知らない静雄がこの部屋に来ると臨也がいた。そのあと、二人はどうするだろうか。答えは簡単だ。いつものように派手な追いかけ合いが始まる。安易に想像できるこの未来に、セルティとはぶるりと肩を震わせた。
「……ごめんね、セルティ。部屋、壊れちゃうかもしれない」
『……そのときは、引っ越し先が見つかるまでと静雄の家でお世話になってもいいか?』
「……うん、着替えとか持って来てくれると嬉しいな」
この後、暗い雰囲気をぶち壊す明るさで新羅が帰宅するのだが、二人から話を聞いて急いで引っ越し先を調べ始めたのは言うまでもない。
――インターホンが鳴る。セルティとが出迎えると、そこには何も知らない門田達が立っていた。後ろには帝人と杏里の姿もある。
「おい、何かあったのか? 顔色悪いぞ」
『え、えーっと、中に入ったら話す……』
セルティに促され、五人は中へと入って行く。ソファーにはいつもの白衣を着た新羅が座っていたのだが、何故か彼も元気が無かった。
テーブルの上には何故かマンションの物件が載った本が散らばっている。
「あぁ、いらっしゃい」
「……お前もどうしたんだ。何でそんな本が散乱してるんだ」
「これには、事情があってね……もしかしたら、この部屋が壊れるかもしれないんだ」
「はぁ?」
セルティとはこれまでの経緯を話した。静雄だけを呼ぶつもりが、手違いで臨也にも送信してしまった事。そして、二人ともここに来ると言う事。臨也は静雄が来ると言う事がわかっていたようで、面白半分で誘いを受けたような気がすると付け加えて。
二人から話を聞いた五人は唖然とした。ここに、静雄と臨也が来る。それだけで二人が思い描いた想像と同じ想像を思い描く事が出来た。
「それは、本当なのか。本当に、あの二人がここに来るのか」
「大変じゃん。……私達、生き残れるかな?」
「生き残りたいっす! まだ生きてたいっす!」
「ど、どうしよう園原さん。……大変な事になったね」
「そうですね……。どうなるのでしょうか……」
「どうなるもこうなるも、それは神のみぞ知る……そうだろ?」
聞き覚えのある声に全員が一斉に振り向いた。
壁に凭れて腕を組んでいるのは、先程まで話題の中心だった折原臨也。いつの間に入ってきたのだろうか。悠然たる態度でこちらを見ている臨也には、これから静雄が来るかもしれないと言うのに口元には笑みが浮かんでいた。
「いいじゃないか、楽しもうよ! こうして俺とシズちゃんが一緒に遊ぶ事なんて最初で最後かもしれないだろ?」
「お前はそうかもしれないが、静雄はお前と楽しむつもりなんて無いだろうよ」
「そうかなぁドタチン。……意外と面白い展開が待ち受けてるかもしれないよ?」
臨也は当たり前のようにの隣に座った。その近さにはセルティの方に寄るが、すぐに臨也が距離を縮めてくる。寄れる限りセルティの方に寄ろうとしたとき、再びインターホンが鳴った。
誰が来たのか、全員がすぐにわかった。
臨也と同じく、先程まで話題の中心だった人物だ。
「悪いな、少し遅れ……あぁ?」
「やぁシズちゃん。先にお邪魔してるよ」
全員が息をのんだ。――恐れていた事が始まったと。
「何でてめぇがここにいるんだぁ? いーざーやーくーんよぉ」
「ちゃんに誘われたからに決まってるだろ? ほらほら、いいから座りなよ。あぁ、別に参加したくないならそれでもいいけどね。俺が王様になってちゃんの番号を指定してあんなことやこんなことまでさせちゃうからさぁ?」
「黙れノミ蟲野郎! 喋んな! 参加しねぇなんて言ってねぇだろうが!」
「はいはい、聞いたよねぇ今の言葉」
黙れ、喋るなと言われた矢先に喋り出す臨也。静雄に気付かれないように小さな声で門田に話しかける。
「ほら、俺の言った通りになっただろ? 面白い展開になった」
「……お前がそういう風に仕向けたの間違いだろ」
波乱に満ちた王様ゲームが、今始まろうとしていた――。
セルティが用意したくじを引く。王様のくじは先が赤く塗られているものだ。最初にそれを引いたのは、皆が『こいつだけは王様にしたくない』と思っていた人物だ。
「あ、俺が王様?」
「てめぇ、イカサマしたんじゃねぇだろうなぁ?」
「何で俺が王様ゲームでイカサマなんか仕組まないといけないのさ」
王様は臨也。くるくると器用に引いたくじを回しながら優雅に足を組んだ。
「じゃあ……そうだなぁ、俺、誕生日が5月なんだ。だから、5番の子にしようかなぁ」
――え、5番?
は焦った。何故なら、の持っているくじの先には『5番』と書かれていたからだ。
自然と胸の鼓動が速くなる。臨也の出す命令はどんな内容なのだろうか。あまり期待はしてはいけないが、普通の内容だったらいいのにと願った。が、その願いは虚しくも届かない。にたりと楽しそうに口元を歪め、臨也は『5番』の者に命令を出した。
「王様の俺と、ポッキーゲームしてもらおうかなぁ?」
目の前には狩沢達が『王様ゲームにポッキーゲームは定番だよね!』と用意したポッキーが置いてある。
「ほら、5番の子は?」
「……わ、私です」
「おい臨也。他の番号にしろ」
5番がだと知った静雄は、臨也に番号を変更するように言った。しかし、それが通じる相手では無いと言う事を誰もが知っている。そして、臨也はこれが静雄に対する嫌がらせに繋がると言う事も知っている。
だからこそ、とても良い笑顔でそれを断った。
「王様の命令は、絶対なんだよ? ほら、ちゃん、銜えて?」
「うぁ、は、はい」
臨也にポッキーを押し込まれ、銜える。それを楽しそうに眺めているのは狩沢と遊馬崎だ。
「ちゅーとかしちゃって……?」
「それは展開としては面白いけど、静雄さんが黙っていないんじゃないっすか……?」
少しずつ臨也は食べ進めて行くが、の口は動かない。頬を紅く染め、視線を臨也から逸らしている。
それを見ていた静雄は、持っていたグラスを無意識にへこませた。怒りと、臨也に対する嫉妬から力が入ってしまったのだろう。静雄の向かい側に座っていた門田が口パクで『落ち着け』と言葉をかけたが、相手はあの静雄だ。そして、その静雄をそうさせているのは臨也。そう簡単に落ち着くわけがない。
すると、静雄は突然立ち上がった。
「静雄?」
「……セルティ、席、換わって貰ってもいいか?」
『いいが……何をする気だ?』
あと少しでポッキーが無くなる。イコール、臨也とがキスをしてしまう事になる。臨也とがポッキーゲームと言う事でも苛立っているのに、キスとなるとその苛立ちは計り知れないものになる。
セルティと席を換わってもらった静雄は、隣でポッキーゲームをしているの両肩に手を置いた。そして――。
「え!?」
――ポッキー、割れた!?
ぽきっ、と軽快な音を立てて割れるポッキー。後ろに倒れそうになる。だが、後ろに倒れる事はなく、ベクトルはソファーの背もたれがある方向へと変えられた。
「ちょっと、シズちゃん」
邪魔をされたと怒りを露わにする臨也を尻目に、静雄はまだが銜えているポッキーの端を銜えた。ポッキーは折れた為とても短い。少し口を動かすとすぐにとキスする事になった。
途端、狩沢と遊馬崎がはしゃぎだす。騒がしくなるが、静雄は気にせずに角度を変え、少しだけ開いているの口の中に舌を入れた。
「んっ……」
から漏れる声に狩沢と遊馬崎もヒートアップ。それを門田が必死に止めていると、静雄との唇が離れた。濡れた瞳が情欲をそそる。
「……やってくれるねぇ、シズちゃん。王様の命令は絶対だって言った矢先にこんな事してくれるなんてさぁ」
「うるせぇ。てめぇの命令なんて素直に訊いてられるか」
の肩を抱き寄せて臨也を睨む静雄。
「に触れていいのは俺だけだ」
「こ、こんなときにな、何言って……」
「俺以外の奴が触れるなんて許せねぇんだよ。特にてめぇはなぁ、臨也ぁ!」
――お、王様ゲームどころじゃ無くなったような……。
申し訳ないと思うのと同時に、静雄にここまで想われて嬉しいと思う気持ちがある自分に気付いたは複雑になったが、それでも嬉しい事に変わりはなかった。
あと少しで本当に臨也とキスをする事になっていた。もし、触れたのが静雄の唇では無く、臨也の唇だったら。はそっと自分の唇に触れた。
――私も、静雄さん以外に触れられるのは、嫌だな……。
『なぁ、新羅。次は私が王様でいいか?』
「ちょっと待ってセルティ。くじを引こうねくじを。王様ゲームの意味が無いだろ?」
「でも、次またくじを引いて臨也さんだったら……」
「さんの番号がまた命令されるような気がしますね……」
結局、今回はこのままお開きとなってしまった。別れ際、臨也が静雄に『今度はこんなことが無いように事を進めるよ』と言い残していた。
「誰がそんな事させるか。……ぜってぇ触れさせねぇ」
「……し、静雄さんも、誰かに触れさせるとか、しないでよ?」
「あぁ? 当たり前だろ。俺はお前しか興味ねぇんだから」
誰も見ていない事を確認した後、静雄はに口付けた。長い長い口付けを――。
憂亜様へ捧げます!
遅くなりましたが、静雄さんで『嫉妬夢』と言うわけで……また情報屋さんが結構出てきてますね……。
王様ゲームのネタは『ペルソナ4』と言うゲームのイベントからだったりします。そしてそこから王様ゲームへ……カラオケのネタと同じですね、すみません;
『嫉妬』と言うリクエストを受けているにも関わらず、嫉妬しているところが短いと言う……このまま長い夜へと突入しそうだったのでこうなってしまったのですが、よろしければお持ち帰り下さいませ。
リクエスト、ありがとうございました!
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