TOY様の『ラブ甘なキス5題』からお借りしました。
トムと飲んでから帰ると聞いてはいたが、ぼろぼろになって帰るとは聞いていなかった。
身体に傷一つ無いのは不幸中の幸いなのだろうか。だが、幽から貰った何着もあるバーテンダーの服の一つが台無しになってしまった。
「はい、お水」
「んー……」
から渡されたグラスを受け取る静雄。ちびちびと中に入っていた水を飲み始める。
「何かあったの?」
「なーんにもねぇよ」
「嘘。何にも無かったらこんなぼろぼろになってないよ」
黙りこむ静雄に、はため息をついた。何かあった事には間違いない。それでも何もないとしらをきるのであれば、相手は限定されてくる。
情報屋として有名で、静雄が高校生の時から仲が悪かった人物。
――臨也さん、だろうなぁ。
本当に仲が悪い。いや、仲が悪いと言う言葉では軽過ぎるような気がする。顔を合わせば喧嘩どころではない。
臨也の名すら出したくないのだろう。そして、何があったかも思い出したくないのだろう。ここは静雄の言う通り『何も無かった』と言う事にしておこうと、は立ち上がり、静雄の腕を引っ張った。もちろん、酔い潰れぼろぼろになった静雄を部屋まで運ぶためだ。
しかし、一人では静雄を動かす事が出来ない。腕を引っ張っても、静雄はびくともしない。呼びかけるが、反応しない。起きている事は間違いないのだが。
「ほら! 部屋行こう?」
「……」
「何?」
「いいもんやる」
「え?」
手招きをする静雄。いいものとは何だろうか、とはしゃがみこみ、静雄に近づく。すると、静雄はポケットから何かを取り出し、自分の口に放り込んだ。
「……いじわる」
――小さい子がやるようなイタズラ仕掛けるなんて。
むすっとした表情で立ち上がろうとすると、静雄に思いきり引っ張られた。
「な、何――――」
押しあてられる唇。驚いて身を引こうとするが、静雄がそれを許さない。彼の手がの頭を押さえるようにしているためだ。
強引に入って来る舌に、びくりと身体を震わせる。
酒の匂い、何となく酒の味もする。そんな事を思っていると、何故かそれらに混じって甘いいちごの味がした。
「ん……っ……」
いつもとは違う強引なキスに、ついていくのが必死で、もう何も考えられない。このまま流れに身を任せてしまおうか、と考えたときだった。
「……ふぁ、な、何!?」
口内に広がる甘いいちごの味。ころりと転がる丸い何か。
「トムさんにもらったんだ。やるよ」
「そ、そうなんだ。ありがと……って、ち、違う!」
「何がだよ?」
「その、ふ、普通に渡してくれても……」
顔を赤くするに、にやりと口角をあげる静雄。
「たまにはこういうのも良いだろ?」
酔っているのか、酔いは冷めているのか。どちらにせよ、良いか悪いかと訊かれれば、良いかもしれない。
再び口付けられ、は静雄に身を任せた。
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