――6月19日。時刻は朝の10時。と正臣は、東急ハンズの前にいた。


「帝人が待ち合わせ時間に遅れるなんて珍しいな」


 携帯電話で時間を確認し、正臣は壁に凭れる。
 二人は、日付が変わってすぐに帝人と杏里から送られてきたメールを見てここにいる。しかし、当の本人達は一向に姿を現さない。


「はぁ……ったく、今日は俺の誕生日だって言うのに待たせやがって」


 正臣の言葉に、は過剰に反応を示した。


「……え、今日誕生日!?」

「あれ、言ってなかった? そうなんだよー、今日は俺がこの世に生まれた日だ!」


 めでたい日だとはしゃぐ正臣に対して、は目を丸くして驚いていた。
 今日6月19日が正臣の誕生日だったと言うこと。そして――。


「わ、私も今日誕生日なの……」

「……うん!?」

「私も、正臣君と同じで6月19日が誕生日なの!」


 今度は正臣が驚く番だった。同時に、二人の中で欠けていたピースが全て埋まった。もちろん、それは帝人と杏里に呼び出された理由だ。
 二人は携帯電話を取り出し、帝人と杏里から送られてきたメールを見せ合う。内容はほぼ同じだった。誕生日を祝う内容と、東急ハンズの前に来てほしいと言う内容。それを見た正臣は、わなわなと身体を震わせた。携帯電話をポケットに入れ、の肩を掴む。


「……もしかして、もしかしなくとも! これは!」

「う、うん」

「俺との誕生日を祝おうとサプライズ計画を立ててるな!」

「竜ヶ峰君と、杏里ちゃんで?」

「それしか考えられねぇな。おいおいおいおいー、いつの間にそんなに仲良くなってたんだよ」


 もし正臣の言う通り、帝人と杏里が正臣との誕生日を祝おうと何か計画を立ててくれているのだとしたら。そう考えただけで、は嬉しくなった。


「じゃあ、今遅れてるのも……」

「二人で準備してるんだろうな。楽しみになってきた! ……あ、そうだ」

「ん?」

「今日誕生日なんだろ? ちょっとプレゼント買ってくる。女の子に、しかもに何も渡さないって言うのは俺が嫌だからな!」


 一人で東急ハンズの中に入ろうとする正臣に、は慌てて服を引っ張って止めた。


「わ、私も行く!」

「へ? 何で?」

「正臣君に、プレゼント渡したいし……」

「嬉しい事言ってくれるねー。じゃあ、二人で買いに行くか!」

「うん!」


 二人で中に入り、雑貨を見る。中に入る前に帝人達には『少し遅れる』とメールを入れてある。
 たくさんある雑貨の中で、が少し気になったものがあった。手を伸ばして取ろうとすると、ちょうど正臣もそれを見ていたようで、伸ばした手と正臣が伸ばした手がぶつかった。


「あれ、もしかしてもこれ気になった?」

「私もって……正臣君も?」


 同時に笑みが零れた。正臣とは色違いものを一つ手に取る。


「じゃ、これはにやる」

「じゃあ、これは正臣君に」


 正臣が手にしたのは、小さな十字架に黄色の石がはめ込まれたシンプルなネックレス。
 が手にしたのは、小さな十字架に淡い紫色の石がはめ込まれたシンプルなネックレス。


「おっし、包んでもらうか」


 店員のところへ持って行き、支払いを済ませる。店外で交換しようと話しながら外へ出ると、そこには帝人と杏里の姿があった。


「あ、正臣! さん!」

「すみません、遅くなりました」

「フッフッフ。いいんだいいんだ、気にしないでくれたまえ」

「……正臣?」

「さ、行こうじゃないか! 帝人の家に!」


 正臣の言葉に、帝人と杏里は驚いた。正しくこれから帝人の家に向かおうとしていたのだから。向き合って顔を見合わせている二人に、正臣は左手を帝人の肩に、右手を杏里の肩に乗せる。そのまま少し力を入れて、帝人と杏里の向きを変えた。背中を向けることになった二人。そんな二人の背中に手を当て、ぐいぐいと前に押す正臣。


「ちょ、ま、正臣!?」

「あの、紀田君?」

「ほらほら、エスコート頼んますよーっと! 本当は俺が杏里をエスコートしたいんだけどね? でも、今日の主役はどうやら俺とみたいじゃん?」


 主役はエスコートされねぇとな、と笑う正臣に、帝人と杏里は漸く気付いた。


 ――バレてる……!


「もしかして、さんも知ってるの……?」

「え、えーっと……あ、あははは……」

「言っておくけどな、俺達もさっき気付いたんだぜ? も俺と同じ6月19日が誕生日だっつーからさ、あれ、おかしいなーってよ。そしたら案の定だったってわけだ」


 悪戯が成功したような笑みを浮かべる正臣に、帝人と杏里は諦めたように微笑んだ。


「サプライズパーティーにするつもりだったんだけど、バレちゃったら仕方ないね」


 四人はいつものように他愛のない話をしながら帝人が住まうアパートへと向かった。




「――あ、入るのはちょっと待ってて」

「準備が出来次第呼びますから」


 帝人と杏里は部屋の中に入って行く。その様子を見届けたあと、外で待っててほしいと言われた正臣とは笑い合った。一体、どんな準備をしているのだろうかとわくわくしながら。
 ほんの数分が経ったころ、中から帝人の声がした。


「入ってきてー」

「よし、入るか

「そうだね」


 正臣がドアノブを回す。すると――。


「……え?」

「わ、何?」


 パンッと言う音と共に、帝人と杏里の笑い声が聴こえて来た。


「お誕生日おめでとう! 正臣! さん!」

「おめでとうございます」


 飛んでくる紙吹雪。微かにする火薬の匂い。
 正臣とが驚いていると、帝人と杏里に手を引っ張られた。


「ほら、座って座って! 今日の主役なんだから!」


 言われるがままに座ると、帝人と杏里が立ったまま歌い始めた。それは、誕生日の定番曲。二人で歌うのが初めてだからだろうか、二人とも照れくさそうに歌っている。
 その様子を見た正臣とは、手拍子を入れて一緒に歌い出した。歌い終わったあと、四人は笑いながら手を叩いた。


「くっそー、すっげー嬉しいじゃんかよー!」

「私も、すごく嬉しい!」

「今日は二人が生まれた日だから、園原さんと『お祝いしたいね』って言ってたんだ」

「こうしてお祝いすることが出来て、本当に良かったです」


 にこりと微笑む帝人と杏里に、正臣とも微笑んだ。


「そうだ、、これつけてやるよ」


 きょとんとする帝人と杏里に、正臣は楽しそうに口元を歪めた。ポケットから取り出したのは、先程と共に購入したネックレスが入った袋。中からネックレスを取り出し、正臣はにつける。も、袋からネックレスを取り出し、正臣につけた。
 そして、二人はネックレスを帝人と杏里に見せる。


「何と、お揃いのネックレスー! どう? どう?」

「ど、どうかな。似合うかな」

「似合う似合う。いいね、お揃いのものって」

「大丈夫だ、帝人と杏里のときは、俺とでお揃いのものを買ってやっから」

「え? お揃いですか?」

「俺が帝人に杏里と同じものを」

「私が杏里ちゃんに竜ヶ峰君と同じものを」


 照れる帝人と杏里に、正臣とは声を出して笑った。
 そして思った。こうして自分の誕生日を祝ってくれる友人がいることは、本当に幸せだと。


「ごほん! と、とにかく! 今日は楽しもうね」

「紀田君とさんのお誕生日ですからね」


 再び鳴らされるクラッカー。


「二人ともおめでとう!」

「おめでとうございます」




 Happy Birthday Dear Masaomi and You!








戻る