「何があったのかな…?」


 が保健室の扉を開けると、中で伊作と乱太郎と数馬が倒れていた。薬などを入れている棚が倒れており、中身が散乱している。
 それだけではない。忍たま達の持病などがすぐわかるようにと学年別に纏めてあった紙までもが散乱していた。


先輩、これは私が悪いんです!手を怪我してしまったので救急箱を取ろうとしたのがいけなかったのです!」


 数馬の下から顔を出し、自分が悪いと言う乱太郎。数馬がすかさず、それは違います!と否定した。
数馬の話では、乱太郎は救急箱を取ろうとしたが届かず、偶然そこに現れた数馬が事情を知り、取ろうとしたのだと。だが数馬も手が届かなかったため、乱太郎を肩車し、ようやく救急箱に手が届いた。しかし、ここで保健委員が持つ“不運”が起きた。
 このタイミングで数馬の足がつってしまったのだ。痛みに気を取られ、床に膝をついた。数馬の肩に乗っていた乱太郎は、いきなり下がったことに驚き救急箱を落としてしまった。散らばってしまった中身を戻そうと上半身を軽く前にやったときに乱太郎の頭が薬棚に激突。


「…だから乱太郎のせいではありません!肩車したこと忘れて前かがみになってしまった僕が悪いのです!」

「――いや、数馬も悪くないよ。元はと言えば原因は僕にある」


 頭を押さえて起き上がる伊作は、救急箱を指した。


「救急箱を薬棚の上に置いたのは僕なんだ」


 片付けをしていたとき、救急箱を薬棚の上に置いてしまったそうだ。それを思い出し、保健室へ向かうと数馬と乱太郎がいて、薬棚が倒れようとしていた。
 何とか二人を助けようと引っ張ったのだが間に合わず、怪我をさせてはいけないと二人を庇うように薬棚との間に入り、下敷きになった。


「本当にごめん!…何回薬棚倒せば気が済むんだって話だよね」

「善法寺先輩、先輩、僕も悪いです!すみませんでした!」

「いえ、そもそもは私です!すみませんでした!」


 に向かって土下座する勢いで謝る三人。そんな姿を見て、はゆっくり腰を下ろした。


「伊作くんは怪我とかしてない?大丈夫?数馬くんは足大丈夫?乱太郎くんは手の怪我をみせてね」

「怒ってないの、…」

「怒るって…何故?困ったときはお互い様だよ、伊作くん。それに、私は皆が怪我してないかどうかのほうが心配だもの」


 そう言って笑うが、伊作は嬉しかった。
 そんな伊作の様子を終始見ていた数馬は、乱太郎の怪我は自分が治療すると言いだした。


「だから、この散らかってしまった薬の整理をお願いできますか?」


 僕達はまだ下級生で扱い方がわからない薬もありますから、ともっともな理由をつけて。
 伊作がに想いを寄せていることに気付いている数馬。応援しているからこそ、ついお節介を焼いてしまう。今回も本当は伊作とを二人きりにするのが魂胆なのだが、二人はまったく気付いていない。寧ろ伊作はと二人で片付けることに喜んでいるようだ。
にやり、と微笑み、数馬は乱太郎の治療を始めた。
伊作とも薬を順番に棚に片付け始める。は横で片付けている伊作の背中がどうしても気になった。


「背中、打ったんじゃない?」


 伊作の背中の上に薬棚は倒れていたからだ。もしかしたら怪我をしているかもしれない――心配で仕方がなかった。


「あぁ、うん。でも骨とか折れてる感じはまったくないし、大丈夫だよ。ただ後で湿布ぐらいは貼るつもりだけどね」

「うん、痣が出来て熱を持ってるかもしれないもんね」

「文次郎や留三郎なら怪我一つ負わずに助けれるんだろうけど。あはは、背中を強打するなんてね」

「…でも――」


 意味深にそこで言葉を区切る。少し頬に赤みがさしている。





「伊作くん、かっこいいと思うよ。身を挺して助けることが出来るんだから」





 例えうまくいかなくても、守ろうとした人に怪我一つ負わせていないのだからすごいことだとは言った。
 の言葉に伊作は顔を紅潮させた。





――に、かっこいいって言われるなんて、思ってもみなかった…!





「三反田先輩、お手伝いしなくてもいいのですか?」

「善法寺先輩の邪魔になるからダメだ」


 会話は聞こえないが、から何か言われて嬉しかったのだろう。とても幸せそうに笑う伊作。
 そこに自分達が入ると、せっかくの雰囲気が台無しになると思ったのだろう。


「頑張ってください、善法寺先輩!」


 大変な作業もと一緒なら楽しくこなせてしまう伊作を心から応援する数馬だった。









おまけ

「こら、数馬!乱太郎!そんなとこで寝ると風邪ひくぞ!」

「うぁーい…」


 返事はしても中々動かない二人。困ったように眉を下げるが、伊作の口元には笑みが零れていた。
 奥から布団を持ってきて起こさないように上にかけた。


「あはは、伊作くん何だかお父さんみたいだね」

「そ、そうかな?だったらはお母さんみたいだよ」

「ふふっ、じゃあ残り片付けてしまいますか、お父さん」

「この子達が起きないように静かにしないとね、お母さん」


 くすくすと笑い合う伊作とは、また作業に戻った。










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