――セットンさんが入室されました。
[うわあああああああ]
[ど、どうしよう、どうしようどうしよう怖い震えが止まらない]
[今家には新羅いないし私一人だしどうしようもないし]
[はっ…!私は今一人…襲ってくるんじゃ…!]
――さんが入室されました。
[よかった!よかった!が来た!]
<こんばんはー…って、何かあったの?>
[は今テレビつけていないのか!?つけていないのならそれでいいが、絶対につけるなよ!]
[絶対だ!絶対に8チャンネルなんか見ては駄目なんだ!]
[って、あぁ!言ってどうするんだ!]
[見るなよ、絶対に見るなよ!]
画面の向こうで何故かセルティがとても焦っている。と言うよりも、何かに怯えているような気がした。
――8チャンネル。テレビのある方に目を向けると、静雄が今別のチャンネルの番組を見ていた。机の上に置いていたノートパソコンを持ち、静雄の元へ行く。
「どうした、。お前、今セルティと話してるんじゃねぇの?」
「うん、それなんだけどね…。チャンネル、変えてもいい?」
「別にいいけど…何で」
「これを…」
画面を見せると、静雄は若干口元を引き攣らせた。
「本当にセルティなんだよなぁ?」
「うん、セルティなんだけど…」
「チャンネル変えてみっか」
リモコンを手に取り、静雄は問題のチャンネルのボタンを押した。どうやらこの番組はスペシャル番組らしく、画面右上には『宇宙人の目的とは一体何なのか!?SP』と書かれている。映し出される映像は、各国で偶然撮影された宇宙人らしきものの映像ばかり。
と静雄は首を傾げた。セルティが怯える理由がよくわからないのだ。にノートパソコンを借り、静雄はセルティに話しかける。
<見てみたけど、これの何が怖いんだ?>
[静雄か!?これの何が怖いって…お前、見たのか!?]
<今も見てるけど>
<も見てるぞ>
[もか!?あれほど駄目だと言ったのに…!]
[いいか、リトルグレイは…宇宙人は怖いんだ!どんな超科学を持っているか…!]
[日本だけではない、全世界でリトルグレイは確認されているんだ!]
と静雄は思った。――笑ってはいけないと。
確かに、セルティの言うとおりだ。宇宙人はどんなものを持っているかがわからない。解明すらされていないのだから。
しかしだ。ここまで気にするような話なのだろうか。映像には宇宙人らしきものが映ったりはしているが、それが実際に宇宙人かどうかすらわからない。落ち着け、とセルティに言いたいが『これが落ち着いていられるか!』と言われるのが目に見えている。
[もしかしたら、私も連れ去られて解剖されるのかもしれない…!]
[気付いたらリトルグレイと同じ形に変えられてるかもしれない…!]
セルティの書き込みは速く、目で追うのが精一杯だ。返事を打とうにも返す言葉が見つからない。
「…セルティに言ってみようか、人間も宇宙人の一種だって」
「やめとけ。絶対に混乱するから」
「セルティも、怖いなら見なければいいのにね」
「怖いもの見たさってやつか?」
も怖がりのくせに心霊番組などを見てしまうので、もしセルティがと同じであれば気持ちはとてもわかる。怖い、無理――そう思っていても、やはり気になり見てしまう。見た後に後悔し、ひどいときは一人でトイレに行けなくなり、静雄に付いてきてもらった記憶もあった。
[あぁ!今の見たか!?おかしくないか!?そうか、あれが瞬間移動というものか!?]
[アニメや漫画や映画だけの話ではなかったんだな…。まさかリトルグレイまでもが使えるなんて]
<…セルティ、まだ見てるのか?>
<そろそろ番組を変えろよ。な、絶対にそっちのほうがいいって>
<そうだよ、変えちゃえばいいんだよ。そうすればもう怖くないよ!>
静雄とは交互にセルティに話しかけ、チャンネルを変えることを勧めた。チャンネルを変えれば、セルティが怖いと思う宇宙人を見ることはないと。
[そ、そうだな…。チャンネルを変えよう…]
<これで安心だね、よかった…>
<それにしてもよ、何でその番組かけたんだ?>
静雄が疑問に思うのは当たり前だ。セルティの言葉を聞いている限りでは、かなり前からリトルグレイ、つまり、宇宙人をかなり怖がっていた様子が見受けられた。テレビ欄などを見れば、今日の番組表など一目瞭然なのだが――。
[…その…何と言えばいいのか…]
[き、気になってしまったんだ!番組表を見て…リトルグレイの…宇宙人の特番をやるって書いていたら…]
[怖いけど、気になってしまって、それで…。やっぱり見るんじゃなかったって後悔した…]
<セルティ、あの、何て言うか…まぁ、わかるよ、セルティの気持ちすごいわかる>
<私だって、幽霊とか怖がるくせに心霊番組とかつい見ちゃうんだ>
見たことを本当に後悔しているのだろう。セルティの書き込みは落ち込んでいる内容と見てしまった自分への怒りの内容ばかりだった。
しかし、途中から方向性が変わってくる。何故か怒りの矛先がこの場にいない新羅に向かっているのだ。
[そもそも、新羅が私を一人にして仕事に出かけなければこんな怖い思いはせずに済んだ]
<え、あの、セルティ>
[おかしいと思わないか!?新羅はきっとこの番組の存在を知っていたはずだ。私が気になって見ることもわかっていたはずだ]
<落ち着いて、セルティ>
[…今から静雄の家に行く]
[新羅が謝るまで家には帰らない]
[よし、今から行くから。静雄にも伝えておいて]
――セットンさんが退室されました。
は慌てて隣に座る静雄の肩を揺さぶった。
「お、お兄ちゃん!セルティが、セルティが!」
「今度は何だよ」
「い、今から家に来るって」
「…意味がわからねぇ。何でそうなったんだよ」
「新羅さんが謝るまで、帰らないって」
そうこうしているうちに、馬の嘶きのような音が近くで聞こえた。そして、鳴り響くインターホン。
二人で玄関に行き、おそるおそるドアの鍵を開けるとそこには――黒いライダースーツを着たセルティが立っていた。
PDAに『今日はもう帰らないつもりで来た』と打って二人に見せた。
「」
「何、お兄ちゃん」
「今回の件は、あれだよな…。新羅、悪くねぇよなぁ…」
「そうだね…。完璧にセルティの八つ当たりだね…」
日付が変わった頃に、新羅から静雄の携帯に電話が入った。内容はもちろん、セルティのことだ。
全ての事情を伝えたあと、新羅は静雄の家に来たのだが――二人が静雄の家から帰ったのは朝を迎えてからだった。
「…一体、何だったんだろう」
「さぁな。お陰ですげぇ眠いわ…」
今日が休日で良かったと心の底から思った二人は、リビングのカーペットが敷いてある部分に寝転がった。
「部屋まで行く元気すら無いってどうなんだろうな」
「それだけ体力を使わされたってことだよ」
「…とりあえず、寝るか」
「うん…そうだね、寝よう」
――おやすみなさい。
春の暖かな日差しに包まれながら、二人はようやく眠りにつくことが出来た。
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